医療コラム「甲状腺専門クリニックの選び方|専門医による検査・治療のメリット」
昨年5月から始まりました南池袋パークサイドクリニックの新コーナー、甲状腺専門医が皆さんの疑問にお答えするコラムは1周年を迎えました。
前回から半年も時間がたっておりました。と言いますのも、諸般の事情によりクリニックの電子カルテや血液検査機器の総入れ替えがあったのです。入れ替え前の準備や入れ替え当日の作業と入れ替え後の残務が、本当に、、大変でした(T_T)。
ようやく4月から新稼働となりまして、やっと慣れてきたところ?でしょうか。という訳で無事に?! 5回目を迎えることができました。引き続き、皆さんが日常で感じる疑問を拾い集めて長く続けていきたいと思います。
こちらのコーナーが皆さんの甲状腺への理解を深め、必要な方が適切なタイミングで甲状腺の先生と出会えることの一助になりますように...。
今回のテーマは
『甲状腺専門クリニックの選び方|専門医による検査・治療のメリット』
これまでのコラムでもお伝えしてきているように、甲状腺の検査や診察は、生涯で一度も受けずじまいという人もいらっしゃいます。それは、通常の基本的な健康診断(学校や会社、自治体で行われるような国の定める法定健診を基本とするもの)には含まれませんし、人間ドックなど更に多くの検査を個人の判断で受けるようなものでさえ、含まれていない事も多いからなのです。国の推奨するがん検診(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5つ)にも、もちろん含まれておりません。
ですから、気になることがある時や誰かに甲状腺チェックを勧められた際には、きちんと甲状腺の検査・診察を受けることが大切です。今回は、甲状腺の検査・診察を受ける際、精査により甲状腺の病気の診断が確定した際にどういったことを念頭にクリニックを選んだらよいのかについて触れてみたいと思います。

<はじめに>
何か別の理由で定期的に受診している先生から甲状腺についてチェックが必要と言われた、あるいは健康診断で言われたという場合は、大抵はその先生や施設のおすすめの甲状腺の先生に紹介状を書いてもらえるのではないかと思います。それが、皆さんにとって長く通っていて良くご存知の先生からの紹介であれば、その繋がり・お勧めの先生に診てもらうのが一番安心ですね。
ですが、特にお勧めの紹介先がない場合や、自分自身が気になることがあって診てもらいたいと言った場合には、本日お伝えすることを参考にしてみて下さい。
<ステップ1:基本の探し方>
例えば、私がずっと見ている患者さんが遠方にお引越しをされるという場合、もちろん知っている先生がお近くに居れば良いのですが、お引越し先によっては全く当てがないという場合もあります。そういう時には、まずはご本人が探して受診してみたい施設があれば紹介しますが、ご本人も決めかねている時には一緒に探してみます(検索してみます)。
まずは、
「[駅名や地域名] 甲状腺 クリニック」といったワードで検索して、次を確認すると思います。
①交通の便が良さそうかどうか
②診察日時(土曜日もやっているのか?平日の時間帯など)
③ホームページの内容(全体の印象、甲状腺についての説明記事など)
④先生の雰囲気を確認
これらは、甲状腺と関係なく皆さんもチェックされるポイントだと思いますが、私が確認している点は、その先生のご専門領域です。
なるべく甲状腺を一番の専門としている先生が良いと思います。甲状腺「も」診ているという先生よりは、甲状腺「ばかり」診ている先生ということです。が、これは、どの地域にも甲状腺「ばかり」の先生がいるとは言えませんので、甲状腺「も」診ている先生の場合は、ホームページで甲状腺についての説明や解説のページをご覧いただき、内容から判断してみて下さい。その先生の甲状腺に対する熱意?が感じられるかどうか?と言った意味です(笑)。
他の地域では、甲状腺「ばかり」の先生のクリニックが少ない(あるいは無い)かもしれませんが、少なくとも東京都内は激戦区?!で、(ほぼ)甲状腺「ばかり」の先生のクリニックはたくさんありますよ。東京以外でも、最近は特定の疾患に特化した先生のクリニックが増えているため、甲状腺のクリニックも増加傾向と思われます。
ちなみに私自身の専門領域は、「内分泌外科」です。内分泌外科というのは甲状腺・副甲状腺・副腎・膵臓(膵臓に発生する一部のホルモン産生腫瘍の診療に限る)を診る外科医です。
大学病院勤務時代はこのすべての疾患についての診療・研究を行っていました。が、副腎や膵臓に関しては大学病院でないと診療が難しいため、2013年の当院開業とともに当院(クリニック)へ移動してからは、甲状腺・副甲状腺の診療全般へと仕事の内容が変わりました。と言いましても大学時代も割合では甲状腺が圧倒的に多かったので、私の医者人生のほぼ全期間を通して甲状腺ばかり診ているといっても過言ではありません。
※乳腺外科医でもありますが、割合としては内分泌外科領域の診療が多く、こちらのコラムでは話がややこしくなるので省略します(^^;)。
<ステップ2:甲状腺専門クリニック・先生が近隣にみつからなかった皆さん>
自分の地域に甲状腺「ばかり」の先生は見つからなかった、何なら甲状腺「も」という先生も探せなかった、という場合です。
皆さんがここで困ってしまう理由が、実は、甲状腺をどの診療科で診るのかが地域や病院ごとに違うからなのです。目がおかしかったら眼科、かゆいブツブツが出来たら皮膚科、膝が痛かったら整形外科に行こうという感じにいかないのが甲状腺。患者さんにとっては、大変分かりにくい状況ですので、病院の予約案内の方に受診すべき診療科を相談しましょう。ちなみに、たとえ私だとしても状況を知らない病院だった場合は、その病院のどの診療科が適切なのかはわかりません。
単純に考えれば、総合病院でしたら「糖尿病・内分泌内科」などの診療科あるいは「耳鼻科」を受診するのが良いかと思います。その際、事前に病院の予約案内の担当者に「甲状腺はどの診療科にかかったらよいか?」を確認の上で予約をお取りになってみてください。
どちらの診療科が良いのかは状況次第となります。
甲状腺の病気は大きく分けて、①甲状腺機能の異常(甲状腺ホルモンが高い・低いなど)と、②甲状腺の腫瘍 の2つがあり、とても簡単にいえば、①は内科系の先生(糖尿病・内分泌内科など)が得意、②は外科系の先生(耳鼻科など)が得意だろうと言えます。
①甲状腺機能の異常の場合:
総合病院ではたいていが糖尿病・代謝・内分泌内科と言った診療科で対応してくださるでしょう(診療科名は色々です)。一部の施設では甲状腺機能異常についても外科系(耳鼻科や外科)が対応することもあります。
②甲状腺腫瘍の場合:
歴史的に昔は耳鼻科が主に担当していたと思いますが、1970年代に私が甲状腺の経験を積んだ東京女子医科大学内分泌外科を開局された藤本先生が、内分泌(甲状腺)を専門とする外科医が必要であるとの考えを提唱されました。後に1982年に、東京女子医科大学で「内分泌外科」という診療科を全国で初めて開局され、そこから外科医の中で甲状腺を専門とする先生が増えていって今日があります。
ですので、耳鼻科と内分泌外科のすみ分けは病院ごと・地区ごとに違うという背景があります。1つの病院内で耳鼻科でも外科でも診ますという場合や、どちらかでしか診ないという場合などがあるためそれぞれの施設で聞いてみてください。
また、内科のクリニックでホームページなどに「甲状腺」のページが余りなくても、実は得意という先生もいらっしゃるので、お電話で受付の方などに相談してみると意外とお近くにも甲状腺が得意な先生がいるかもしれません。
<ステップ3:どこの甲状腺専門クリニックがよいのか迷われている皆さん>
甲状腺のクリニックはあるが、その中でどういった選び方をしたらよいのか?とお悩みの皆さんもいらっしゃるでしょう。ホームページの情報から、クリニックの雰囲気や交通の便の良さ、先生の様子なども重要なポイントになると思います。
ここでも、受診する理由(自分が①甲状腺機能の異常、②甲状腺腫瘍 のどちらを念頭に置いているのか)で変わってきます。先ほどお伝えしたように、ざっくりとは①は内科系、②は外科系となります。先生の経歴を診てみるとどちらか分かるはずなので、まずはこれらを確認してみましょう。(ご存知の通り私は内分泌外科医なので外科系です!)
さらに、
そのクリニックで出来る検査など「クリニック特性」を確認してみましょう。
①甲状腺機能の異常(バセドウ病や橋本病など)を疑う場合
・必要な検査:血液検査と超音波検査
・選ぶポイント:これらの検査が迅速に適切に受けられる施設であるか。また、定期的な検査結果をその場ですぐに適宜判断してくれる体制があるか。
②甲状腺腫瘍(しこりや甲状腺がんなど)を疑う場合
・必要な検査:血液検査と超音波検査、細胞診(病理検査)
・選ぶポイント:頻度としては良性腫瘍が多いですが、甲状腺がんの可能性も含めて適切に早く診断(良悪性の判断、手術が必要かどうかの判断)をしてくれるか。また、悪性の場合や手術が必要な場合に、信頼できる先生のもとで手術治療を受けられる体制があるか。
これらをホームページで確認したり、必要であればお電話で問い合わせをしてみましょう。問い合わせの時のポイントは、「①誰かに受診を勧められたのか、自分が心配な点があるのか」、「②受診したい理由(特に腫瘍を心配している場合は、その点を具体的に伝える)」の2点です。
いかがでしょうか、
自分に合った甲状腺の先生が見つかりそうでしょうか。
<おわりに>
とても大切なことをお伝えすると、私(ほぼ甲状腺「ばかり」診ている人生です)の経験では、甲状腺に関してその状況(病気があるのかどうかや、対応を要するかどうか)を正しく判断できるのは、やはり甲状腺の先生です。一般内科の先生でも診て下さる先生はいると思うのですが、微妙な状況であることも多い分野であり判断が難しい場合も多いと思います。
ですから、例えば「遠方にしか甲状腺の先生がいなかった」という場合でも、気になることがある場合には、是非一度は甲状腺の先生に診てもらってください。その上で、結果に応じて可能であれば近所の先生へ引き継いでもらう等を相談してみましょう。
そしてもう一つ、これまでのお話で内科系/外科系と分けてお伝えしましたが、甲状腺「ばかり」の先生の中には「私はどっちも得意です!!」という甲状腺ヲタクの先生もいらっしゃいます。これも、きっとホームページなどをご覧になれば情報が得られると思いますので参考にされてください。
ちなみに(宣伝となります(笑))、当院医師は私を含めて3名とも内分泌外科医(外科系)ではありますが、内科系疾患の診療経験もとても豊富なためどちらも得意な甲状腺ヲタクです。もちろん、外科系(甲状腺腫瘍)が最も得意であります。当院の体制は内科系・外科系どちらの検査も迅速に進められるよう整えてありますのでご安心ください。
また、当院はクリニック(無床診療所)ですが、提携している病院で我々が術者となり手術も行っています。手術を要する疾患であっても、手術のタイミングで主治医が分断されることなく、長く主治医として皆様とお付き合いできることをモットーとしておりますので、その点もご留意頂けると幸いです。
<おまけ>
5月25日は『世界甲状腺デー』です。なかなか分かりにくい甲状腺疾患の自覚症状に気づいて、適切な甲状腺検査を受けられるよう啓蒙する日となります。
本日のテーマはすでに甲状腺の検査を受けたい人向けでしたが、「そもそも甲状腺検査を受けるべき状況かどうか??」という一般のみなさま向けに、日本甲状腺学会が作成した動画がありますので、ぜひご覧になってみてください!!
